企業の海外脱出が進んでいるが、人材まで海外流出が進んでいる現実はあまり報道されていない。韓国のサムスン躍進の陰に、日本人技術者の引き抜きがあったことは間違いない事実である。毎日新聞の報道によれば、中国・深州の中国科学院深州先進技術研究院で開発に携わっている人物が紹介されていた。
最高時速250キロ以上の、世界最速バスの開発だそうである。ヤマハ発動機で開発に携わってから、慶大に移り自動車メーカーのモーターより2倍近い走行距離を実現したという。このような、貴重な人材がなんで中国へ流れたのかこれが納得できない。
この高野さんという方は、「我々の技術を使って自由に電気自動車を作ってもらい、一気に普及させたい」という思いとは裏腹に、日本ではメーカーが独占契約を求める求めることが多く普及は進まない。高野さんのおっしゃる通りで、
日本では企業のエゴが優先する。
高野さんは、
「日本にいたら時間だけが過ぎていく」と語っている。この国の閉塞感は、政治だけではない。国の根幹をなす経済にも及んでいるのである。閉塞感と言うよりも、硬直感と言うべきであろう。
経済も硬直していて、柔軟性を失っている。
そして、大学の研究にも企業の金が入る。自社で新技術を取り込もうとして、他国に後れをとる。こんなことばかりやっているから、最近では、研究開発でも韓国に後れをとる有様。当面の研究費は6億だそうである。日本では、その6億も出なかったということになる。
たった6億である。
片や、カジノで100億浪費する財界の人間もいて、一方
ではたった6億の研究開発費も出せない現実は、この国の出鱈目な姿を現している。深州市では、世界の優れた人材を引き寄せるプロジェクト「孔雀計画」を始めたという。
日本は、優秀な学者も米国へ行っている。人材提供国に成り下がったようである。サムスンへの人材流出に対して、何も手立てを講じなかった日本企業。これからは、電気自動車の時代と言われているのに、優秀な技術者を中国へ引き抜かれる現状をどう見るか。
日本の常識が、世界の非常識で技術者や研究者を大事にしない体質は昔からである。金をつぎ込むべき対象を間違っている。最近は、テレビから撤退する家電メーカーの話もある。
技術開発に携わる人間を優遇しない体質は、この国の衰退を招いている。
欧州経済では、ドイツが一人勝ちを続けている。ドイツと日本の違いは、技術者を大事にする国と、技術者を粗末にする日本との違いではないだろうか。この国を支えて発展させたのは、背広を着ている人間よりも、作業着を着て、技術開発に励んだ人間たちであることを認識する必要がある。
口先三寸の背広組が、大手を振って歩いている現状を打破し、
技術者や開発者をもっと優遇しないと、この国の経済の発展はありえない。このままでは、衰退するばかりである